同室の善法寺伊作が、最近おかしい。
ふとした瞬間、なにか思い詰めたような顔をしている。
そのくせ、普段ならいつも俺に相談するのに、それすらない。
こういうときは俺が何かしたのか、というくらいしか思い付かないのに、そんな覚えも残念ながら無かった。
「ったく、なんなんだよ……。」
「なにがですかー?」
「うわぁぁぁぁぁっ?!」
「ちょっとちょっと〜、学園きっての武闘派、食満留三郎先輩ともあろうお方が俺の気配に気づかないなんてどうしたんです?
潮江先輩にたるんどるって言われますよ?」
目の前には一人の後輩、五年い組の尾浜勘右門がいた。
奴の学年もい組は優秀なのだが、こいつは少し底がしれない。
実力もあれば人望もあるが、どうにも掴み所がない。
まあ、そんなやつでないと学級委員長なんてやっていられないだろう。
「何か用か、勘右門。」
「可愛い後輩にその言いぐさですか〜?まあいいですけどっ。
学園長先生からの指示で各委員会の委員長と委員長代理にこのプリント配ってるんですよ〜」
ぴらりと一枚の用紙を渡される。
まあこれはあとで確認すればいい。今は伊作のことである。
「で?なにを悩んでるんですか?」
「はぁ?なんでお前に話さにゃならんのだ」
「だってほら、話せば割りと簡単なことかも知れないじゃないですか!!
それに俺学級委員ですし」
「話すとしてもそんなのうちの学級委員に…」
「いやいや、食満先輩の組は学級委員の設定決まってないからまだ居ませんよね」
「…だからと言って後輩に相談するなんて
「話してください」
拒否する言葉は遮られた。
なんだかわからないが、話すまで帰ってもらうことは出来そうにない。
俺は溜め息を一つ吐いて彼に話した。
伊作がおかしいのだと。
「うーん…先輩の話から察するに、それは恋煩いというやつじゃないんですか?」
「伊作が……恋…煩い……?」
信じられない。
あの伊作が恋を?
「先輩?」と呼び掛ける勘右門の声が聞こえたが、それこそ今はそれどころではない。
どうしたら良いのだろうか、やはり相談に乗るべきなのか?
「あちゃー、こりゃ聞こえてないな……。
ま、相手はどうせ……」
勘右門が去り際に溢した台詞は、俺の耳には入らなかった。
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いつも通りに、いつも通りにと思えば思うほど、巧くは行かなかった。
俺がおかしいと感じていた伊作よりも、今日の俺の方がおかしかったはずだ。情けない。
同室のやつが、一番信頼しているあいつが恋なんて。それを俺に言わない。それだけで。
いつの間にか就寝の時間になっていた。
普段なら寝るまえに鍛練をするのだが、何故か今日は異常なほどに身体が重い。
いや、本当は今日だけではなかった。ここ一週間ほどだ。
そのたびに伊作が言うのだ。
「留さん疲れてるんだよ、今日は寝よう?」
眠れば朝は問題がないどころか、むしろさっぱりと覚醒していて、全く問題ないのだ。
夜になると、何故か、
「留さん眠そうだね。もう寝よう?」
ほら、また。
今日は身体すらうまく動かせない。おもい。
そのまま、俺の意識は、
途切れた。
-------------<Side Isaku>-------------
留さんは気持ちよさそうに眠っている。
毎日少しずつ、少しずつ毒を盛った。
気づかれないように。慎重に。
その毒は少しずつ彼を蝕んでいって、一時的に動けないようにしてしまう。
こうでもしないと、僕だけのものになんてきっとなってくれないから。
「ねえ、留さん。好きだよ。
僕を見て。留さんの一番を僕にして。
ねえ留さん。」
僕のために。僕のためだけに、笑って。
ヤンデレ伊作×純情留三郎が書きたかったんです
そして作者の趣味で勘ちゃん乱入させました!可愛いですよね勘ちゃん!!←
食満伊も大好物なんですが、伊食満クラスタさん少ないのでお友達欲しいです…
お題:「確かに恋だった」より